フリーランスになると気になるのが税金の事。
住民税や所得税はもちろんの事、個人事業税や消費税といったサラリーマンの時にはあまり気にしていなかった税金についても支払いを意識する必要があるので最低限の知識は必須です。
最低限の知識がないと、フリーランスになって突然手にしたことのないお金が手元に来た際に一気に使ってしまい、
いざ税金を支払うとなった際にお金がない!!
なんて事になりかねません。
住民税や所得税はサラリーマンでも支払うので払うのは当たり前だという意識はあると思いますが、大きく違ってくるのが消費税!!
普段消費者として何気なく払っている消費税ですが、請求者側になると一気に税務処理がややこしくなります。
しかも、実はこの消費税に関する制度が近い未来に新たな制度を携える事で変革期を迎える事となります。
本日は、近い未来に変革を迎える消費税について覚えておきたい事をお話しようと思います。
一般的にフリーランスは消費税が免税されている?
まず大前提として覚えておきたいのはフリーランスの大半は消費税を支払っていないという事。
一般的な消費者としてスーパーやコンビニなどで支払っている消費税は別として、自分の事業の中で請求した消費税については国に納めていない人がほとんどです。
これがなぜかというと、1000万円以下の売上の場合、消費税の免税が許されているから。
これが世に言う免税事業者というやつです。
フリーランスは1,000万円以下の売上の人たちが大半を占めているので、ほとんどの方が免税事業者に該当しているというわけですね。
特にエンジニアやライター、デザイナーなんかは仕入れがない仕事の場合がほとんどなので、必然的に売上はそこまで大きくなく、それなりの利益を得て生活しているなんて方も多いのではないかと思います。
しかしその生活そのものが脅かされる可能性が刻一刻と迫ってきているのはご存じでしょうか?
インボイス制度の施行によって免税事業者は不利になる?
2023年の10月からインボイス制度というものがはじまるのを知っているでしょうか?
実はこのインボイス制度というものが施行されると世の中の免税事業者には大打撃が待っていると言われています。
ではそもそもインボイス制度とは何か?と言うと
「適格請求書等保存方式」とも呼ばれる国が定めた請求方式の事を指します。
このインボイス制度がはじまると、請求側も支払い側もインボイス番号というものが発行ができないと仕入れ税額控除ができなくなってしまいます。
そもそも仕入税額控除とは?
そもそもの話、仕入税額控除というのは生産や流通している間に発生する支払い時に、支払われる消費税が二重課税される事を避けるための制度です。
例えばソフトウェアの購入額を考えてみましょう。
エンドユーザー(A)と販売店(B)、開発店(C)の関係があったとします。
ソフトウェアのエンド価格が132万円(税込)だった場合、販売店(B)がエンドユーザー(A)から受け取るお金は132万円(税込)で120万円+12万円(10%)と12万円の消費税が発生しています。
更に、販売店(B)が開発店(C)から購入した際の仕入価格が77万円(税込)だった場合、70万円+7万円(10%)で7万円の消費税が発生している事になりますよね。
この場合、販売店(B)は消費税を12万円国におさめる必要がありますが、既に開発店(C)に対して7万円の消費税を支払っています。
これらを両方とも支払うというのは酷ですので、販売店(B)が国に納める税金は12万円-7万円で5万円となるわけです。
開発店(C)が販売店(B)から受け取った消費税を国に納付する為、販売店(B)は差額の5万円のみを支払えばいい。
これが仕入税額控除の仕組みになります。
仕入税額控除ができなくなるとはどういう事か?
では、インボイス制度が始まると仕入税額控除ができなくなるとはどういった事でしょうか?
その答えが上記の販売店(B)が納める税金は12万円になるという事です。
要は仕入税額控除が可能だった開発店(C)に支払っていた7万円分の消費税も全て販売店(B)が支払わなければならないという事です。
こういう事が発生するとなると販売店(B)としてはたまったもんじゃありません。
開発店(C)に対して税金の一部を消費税として支払っているのにも関わらず、更に国にも同様の額を支払わないといけなくなるという二重支払いが発生する事になります。
こういった事がインボイス制度が始まると発生する事になります。
そして厄介な事にこのインボイス制度で付与されるインボイス番号が発行できるのは課税事業者のみなのです。
インボイス制度施行により、納税されていない消費税を取りに来た国
インボイス制度は国として納税されていない消費税をすべて獲得するために施行されようとしている制度です。
仮に上記の開発者(C)が免税事業者の場合、開発者(C)は国に消費税を支払う義務がない事から国に消費税は納めていませんよね。
この場合、本来国に納めるはずの7万円という消費税は国に支払われない事から国としては
どうやったら消費税を全て納税させる事ができるのか?
という事を考えました。
そういった中で導入されようとしているのがインボイス制度。
実は諸外国では既に導入されている制度としても有名で、日本も財源確保の為に着実と導入を進めていた制度になります。
インボイス制度施行により考えられる個人事業主への影響
インボイス制度の施行がはじまると個人事業主やフリーランスも大きな打撃を受ける人が増える事は十分に予想されます。
上記の開発者(C)がITフリーランスだと考えればわかりやすいですが、売上1000万円以下のフリーランスと仮定すると企業と契約しているフリーランスに対しての支払いが厳しくなる事が予想されます。
例えば
・インボイス発行できるように事業形態を整えるように言われる
・インボイス発行できない業者とは取引ができないと言われる
といったフリーランスには大変厳しい状況になる可能性があります。
少なくとも今よりいい条件にはならないでしょうし、仕入税額控除ができなくても取引ができるように考慮してくれる事業者なら、まだマシな可能性が高いので何らかの対策や取引先との交渉をしておく必要が出てきます。
免税事業者が考えられる対策は?
2019年現在に免税事業者として活動している方がとれる対策は以下の3つになります。
その1 今まで通り免税事業者を貫く
1つ目は今まで通りに免税事業者を貫く事です。
インボイスが発行できない為、もしかしたら取引先から敬遠されてしまうかもしれませんが、それでも問題ないと踏んで免税事業者を貫くというのも1つの選択肢です。
特に、売上が500万を切ってくる場合、消費税を納税する事によって生活に支障をきたす可能性を否定できない場合があるので、売上の上昇が見込めない場合には免税事業者を続ける方が良い場合もあります。
あまりおすすめはしませんが、免税事業者を貫き、取引先とはインボイス制度を考慮した上での価格交渉を行えるように関係を深めておく事に専念する方法です。
その2 課税事業者となる
2つ目は課税事業者になるという事です。
あまり知られていませんが、売上が1,000万円以下でも課税事業者になる事は可能です。
現在はあえて提出する意味はありませんが、2023年10月以降には課税事業者でいた方が良いという判断のもと、今後提出されるフリーランスも増えていくものと予想されます。
インボイスの思考が2023年10月からという事を考えると2022年中に課税事業者としての申請を提出しておき、翌年は課税事業者として動くスケジュールにするとうまく立ち回る事ができます。
課税事業者になればインボイス番号を発行できるので、特に取引が打ち切られるといった事もないでしょう。
ただし、課税事業者として消費税の支払いがある事を忘れないように計画しておく必要があります。
消費税を甘く見ると痛い目にあうので事前に勉強しておきましょう。
その3 法人成りする
3つ目の手段は法人成りする事です。
法人になると消費税は必ず納める事となりますので、
ただし法人成りして2期目までは消費税は免税されるという制度があります。
よって実質的に消費税の支払いが発生するのは3年目からという事になるので、
2021年までに法人化すれば免税期間の2年間をまるまる利用する事ができ、3年目から課税事業者として動く事が可能です。
免税事業者としてのメリットを活かすなら、今のうちに法人成りしておくという事も重要な選択肢の1つになります。
色々と手間は増えますが、一番効率的かつ今後の成長を望める戦略になるはずです。
税理士への相談や会社設立に役立つクラウドサービス
インボイス制度がはじまると税務関連の制度がややこしくなる事は明白です。
また時期をあわせて会社設立を行いたい事業者も増える事が予想されます。
そんな時に慌ててしまわないように日ごろから情報収集や会計処理に詳しくなっておいた方があとあと楽になります。
freeeではフリーランスの会計処理や確定申告だけでなく、提携している税理士の紹介や会社設立に関する手続きなども行う事が可能です。
日々の取引も自動で記帳する事ができてしまうクラウドサービスの為、会計処理に困っている方は一度使ってみると良いかと思います。
まとめ
インボイス制度がはじまった後の消費税処理についてまとめてお伝えしてみました。
インボイス制度がはじまると会計処理が一気に煩雑化される事になると思いますので、今から準備して備えておく事が必要です。
自分の戦略にあった選択肢を選ぶ事が必要になってきますので、十分な準備の上でインボイス制度の施行を迎えましょう。