前回の記事でSESがなくならない理由を述べました。
IT業界で10年以上働くエンジニアが見たSESがなくならない3つの理由
今回はSESが抱えている本当の問題点を話していきたいと思います。
まず問題点をお話しする前にSESについて再確認しておきたいと思います。
SES(システムエンジニアリングサービス)とはソフトウェアやシステムの開発・保守・運用における委託契約の一種であり、特定の業務に対して技術者の労働を提供する契約です。
IT業界におけるシステム開発の契約形態には、大きく分けて、以下のような形態があります。
[1]顧客から依頼されたシステムの完成を約束し、納品する
(この場合、顧客は納品物の対価を支払います)
[2]技術者の労働を提供する
(この場合、顧客は技術者の労働の対価を支払います)の2種類があり、SESは[2]に当てはまります。SES契約では、システムエンジニアの能力を契約の対象とし、客先のオフィスにエンジニアを派遣して(常駐)、技術的なサービスを提供します。
引用元:ELITE Network
要は成果物ではなく作業過程に対してお金を払うということですね。
そのためSESというのは成果物に伴う責任は生じないという特徴があります。
その代わりSES、システムエンジニアリングサービスという契約の中でも
特に準委任契約に基づく契約
は根強い問題点を多く抱えています。
特に中小企業にはSES企業とも呼ばれる企業が多くあり、どのような違いがあるのか不明な企業も多く存在しています。
本日は10年以上IT業界で働き、さまざまな立場から見てきた
SESの本当の問題点3つ
を話していきたいと思います。
SESが抱える問題点その1 エンジニアの正当な評価が本人に反映されない
まずお話したいのが
SESはエンジニアの正当な評価が本人に反映されない
ということ。
特に商流が深い企業のエンジニアほど正当な評価は反映されない。
例えばお客さんからA社に仕事の依頼があったとする。
依頼を受けたA社は、人が足りない為にB社に下請けとして仕事を依頼する。
仕事を受けたB社は更にC社に対してエンジニアの手配を依頼したとする。
これが俗に言う
IT業界の多重請負構造
というもの。
上記の状態となると
A社、B社、C社のエンジニアが揃ってプロジェクトを進める事になる
のだが、この3人のエンジニアの能力が序列通りの力とは限らない。
例えば1番下請けのC社のエンジニアがめちゃくちゃできるエンジニアで設計からテストまで全てのフェーズに対応できる一方で、A社のエンジニアは経験が浅い駆け出しエンジニアもしくはスキルが見合ってないエンジニアみたいな事が起こる。
すると以下のような状況が発生する。
C社のエンジニア>B社のエンジニア>A社のエンジニア
上記のような状況になると仕事を依頼する側の人間も含め、C社のエンジニアに難しいタスクをお願いするという事が往々にして発生する。
普通ならこの時点でC社に対して正当な報酬が必要だし、一番貢献しているので売上が一番多くなるはずである。
しかしメンバーを用意してアサインしているのはA社。
その為、お客さんからA社にまずは売上が入り、それから下請けの会社に発注費として売上を分配していくのだから当然下請け側が得られる売上が少ないのは明白だ。
よって下請けになればなるほど給料アップも見込めないし、そもそもお客さんとC社の間にはA社、B社と2社も入っているのだから売上の上限も見えてくる。
こういった状況が蔓延するので、いいエンジニアが正当な評価を受けるとも限らない上に
二重派遣や偽装請負を助長する環境となってしまう。
結果的に下請けのヘイトが貯まり、エンジニアとしても良い成果を得られない状態となるの人離れが進む事となる。
下請けになればなる程、いい事がないというのが現実だ。
SESが抱える問題点その2 エンジニアのフォローが現場任せになる
二つ目に問題点となるのが
エンジニア同士のフォロー体制が現場任せとなる事。
これはつまり現場にエンジニアを入れてしまえば後は現場任せだという事。
例えばC社の営業がエンジニアを現場に派遣したとしても、入った後は誰もフォローを入れれる体制にないという状態だ。
これは結構な確率で問題を引き起こしている1つで、それこそ入った先のメンバー間の関りが薄かったり、教える気がない人たちに囲まれたりするとそれだけで力を発揮できないエンジニアも出てくる。
例えば以下のような人と直接かかわる事になると大変な状況に陥る可能性が高い。
・直接関わるメンバーが業務でいっぱいいっぱいで教える余裕がない
・メンバー間で教える気、育てる気がない、文化がない
・そもそも教えなくてもできるよね?という対応で迫ってくる
・お局みたいな人の仕切り方についていけない
などなど数え始めるときりがないぐらい、人間関係による問題が勃発する。
このことをC社に持ち帰って自社で報告したとしても後の祭り状態で、
「現場で何とかしてくれ!」
とか
「営業と現場の責任者で話しておいたから大丈夫」
とか
無責任な放置状態が勃発する。
それこそ
「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」
と叫びたくなる状況だ。
こんな状況を筆者は結構な確率で見てきたので、人を集めるなら人の気持ちがわかり管理できる人をちゃんと配置し、適切な報酬を支払われる状況を作りたいと切実に思っている。
この問題は切実で、これにより精神的なダメージを負い、うつ病をはじめとした病気を発症する人もいるので何とかしたい問題だ。
SESが抱える問題点その3 チーム力が育たない
SES企業をかき集めたプロジェクトに多く存在するのがこの問題。
コアとなるメンバーがしっかりと仕切っているプロジェクト体系が出来上がっている場合、1つのプロジェクトが完了したら振り返り、次のプロジェクトで同じ轍を踏まないようにする。
しかしSES企業がメンバーを集め、プロジェクト完了時に解散した場合、プロジェクトの中で発生したトラブルや貴重なノウハウが放置されたままとなる場合がある。
こうなってくるとせっかくのプロジェクトの経験が一切生きてこない。
結果、同じようなミスを何度も繰り返す事となり、成長がない。
エンジニアとしても特に振り返りをしないままに終えるから、
ノウハウの共有もなく自分がやった作業分の経験値しか得られない。
ドラクエで言うところの1人パーティーでクリアしたものだから、自分の経験しか知らないという状況が発生するのだ。
よって会社としてのノウハウ蓄積もできないし、成長がない状態となるわけである。
結局、1人のできるエンジニアが全てを抱え込んでしまう事もあり、チームで仕事をしているのか個人で仕事をしているのか不明な状態となる為、どうにかしたい状況である。
これを解決するには、やはり同じ会社内で全てを請け負うか、信頼関係のある会社同士でメンバー同士にも関りを持たすように上位の会社がマネージメントをする動きを活発にするしかない。
エンジニアを集めて後は現場任せ
ではなくちゃんと関りあるメンバー同士をフォローするマネージメントができる会社が多く育つ事が必要だ。
SESではなく請負やWEBサービスの自社開発へ
今後はSESというビジネス自体が徐々に減っていく流れになっていく流れと言われており、近年のWEBサービス系の企業の台頭が更にその流れに拍車をかけると言われている。
実際、近年話題になるのは楽天やソフトバンク、LINEやサイバーエージェントといった新興企業が多いし、そのほとんどがWebサービス系の企業だ。
そうなってくるとSESでスキルがつかない状態の場所にいると徐々に危機感を覚える事となる。
すぐになくなるという話ではないが、やはりどんな状況になってもスキルは付けておきたいのが本音だ。
最近は多くのプログラミングスクールが出てきているということもあり、スキルを習得するのに申し分ない。
時間があるうちに技術をつけて、どんな世界になってもいいように備えておきたいところだ。
プログラミングスクールの特徴を比較!学べる技術、無料体験の有無や就職支援情報まとめ!
まとめ
多くの問題点を抱えているSESという仕事の形態。
ちゃんと仕事を回す事ができればいい面もあるのだが、なかなか実態が伴っていない。
次回はそんなSESを主力としている企業の見極め方を紹介しようと思う。