IT業界で10年以上働くエンジニアが見たSESがなくならない3つの理由

2019年8月6日

SES=System Engneering Service(システムエンジニアリングサービス)という仕事の形態については常に問題とされてきた。

SESというと以下のような定義がなされているIT業界における委託契約の一種で、業界に従事していれば聞いたことのない人はいないだろうが、現在この契約形態というのが問題視されている事が多い。

特に最近はSESは問題があるとして株式会社アクシアの米村さんが問題を提起しているので、耳にした事がある人も多いはずだ。

ここで少しSESについての定義に触れておくと・・・

SES(システムエンジニアリングサービス)とはソフトウェアやシステムの開発・保守・運用における委託契約の一種であり、特定の業務に対して技術者の労働を提供する契約です。

IT業界におけるシステム開発の契約形態には、大きく分けて、以下のような形態があります。

[1]顧客から依頼されたシステムの完成を約束し、納品する
(この場合、顧客は納品物の対価を支払います)
[2]技術者の労働を提供する
(この場合、顧客は技術者の労働の対価を支払います)

の2種類があり、SESは[2]に当てはまります。SES契約では、システムエンジニアの能力を契約の対象とし、客先のオフィスにエンジニアを派遣して(常駐)、技術的なサービスを提供します。

引用元:ELITE Network

この契約内容についての記載を見る限りいわゆる準委任契約と言われるもので

「技術に対してお金が支払われる事自体はそこまで問題ないのでは?」

「何が問題なの?」

と思う人もいるかもしれない。

しかし、このSESを用いた契約こそがIT業界における多重派遣構造を生み出しており、かつ長時間労働の根源ともなっていると言っていいほど問題が多く発生しています。

これはSESという受注形態が悪いというよりも

準委任契約を結んだ上で指示系統を明確にしないままに客先常駐しているエンジニアが多い

という事から発生している問題ですが、これだけ問題視されているにも関わらず、日本におけるIT業界は今なおSESによる準委任契約を行う場合が多いという現状があります。

では何故なくならないのか?

それはSESが発注側も受注側も最も都合が良く使いやすい契約という側面があるからです。

本記事では10年以上IT業界で働く筆者が見てきたSESがなくならない理由を述べていきたいと思います。

理由その1 SESは定期的な売上を上げるのに適している

会社を継続する為に最も気にする事のうちの1つが資金繰り。

資金繰りが上手くいけば問題ないが常に順風満帆という会社ばかりではないし、
実際に売り上げが立たないと会社を存続させる事ができないという事実。

それにピッタリなのがSESです。

実際に成果物を納品しないと売上を上げる事ができない契約にする場合、納品するまでの資金繰りがショートし倒産してしまう可能性があるし、成果物が思ったものと違うということでお客様より支払いを貰えない場合も想定されます。

そういったことが発生するリスクというのは常につきまとうし、実際に起こっている事例もたくさんあります。

そうなってくると気になるのは毎月定期的な売上を上げる方法がないか?という事。

これに適しているのがまさしくSESという仕事の受注形態。

月額単価を設定し140時間~180時間とか160時間~200時間の労働で〇十万円といった契約を交わす事により、定期的な定額売上を上げる事が可能になります。

この場合、ほとんどのケースが準委任契約となり客先常駐で多くのエンジニアが囲われる事となるが、多くの場合、契約内容は技術ではなく客先での働いた時間に基づく契約になります。

ある意味で労働契約な為、働いてくれさえすれば売上が上がる事に繋がり、大変ありがたい状況になります。

発注側は時間契約のため、作業する内容は何でも依頼できるのに対して、受注側は時間さえ守れば内容は問われなくて済みます。

お互いに都合が良い状況が生まれるのでSESは重宝されているわけだ。

理由その2 SESは作業責任を負う必要がない

SESは準委任契約のため、成果物に依存することなく売上を上げる事ができます。

そのため成果物に責任を負う事はないです。

よって成果物ができなかった事による支払いのトラブルも回避できるし、ましてや損害賠償なんてことも起きないです。

そういった意味では高度なスキルは必要なく、タスクをこなせれば良いと捉える事ができます。

もちろん入るプロジェクトにあわせ技術者を探すわけだが、何やかんやで順風満帆に見つからない事も多いというのが現状。

そんな状態のため、SESによる準委任契約はかなり結ばれているという状態です。

ちなみに準委任契約というのは仕事の成果については責任を持たない契約ですが、
これはIT業界に関わらずよく結ばれる契約なので契約自体には何の問題もないです。

例えば身近なところでは医者と患者というのも準委任契約に基づいています。

というのも医者に対しては診断する行為にお金を払っているわけであって、病気を治すことにお金を払うわけではないですよね。

手術のような医療行為についても成功することを保証はしないし、あくまで医療行為そのものに対して対価を払っています。

病気が治らないからと言って、その責任を医者に押し付ける人はほぼいないでしょう。

そういった意味であくまで時間に基づき作業をしたことに対して対価を払うわけです。

上記のような結果に責任を負わなくていいというのはある意味都合が良いわけです。

理由その3 SESは契約に関わらず人を動かしやすい

SESの準委任契約を結ぶと成果物に対する責任を負わなくていい代わりに

作業内容も指定しないので、仕事内容に規定はありません。

それこそ契約時に仕事内容の全てを話すことなど不可能なので、実際に現場に行ってみると全然違う内容なんて状況もありえます。

しかし、作業内容までは規定がないのがSESの準委任契約なのでそこに対して物言いするのは筋違いと言うもの。

これは発注者側から見るとかなり都合良い契約と見る事もできますし、信頼関係があればうまく働く事もありますが、一度不満がたまり始めるとなかなか解消できないという側面も持っています。

発注する側と受注側、特に営業とエンジニアの思惑が違うところに働きやすいのがまさにこの部分で、売上を上げるために頑張って現場に入れる営業と仕事内容を重視するエンジニアといった部分でずれが起きる事も結構な頻度で発生しているのが現状です。

その上、現場で指示する人間は契約時に話す人間と違う人間だったりするものだから、かなりハレーションを起こす可能性を秘めているのがSESの怖いところでもありますね。

SESによる準委任契約を都合良く使う企業がいるという事実

上記のような状況からいくとSESがなくならない理由は発注側にも受注側にも都合の良い事が関わっていると言えます。

ただ単純にSESが悪いと単純に言い切るのは難しく、準委任契約という契約自体は世間的にも結ばれている契約だということで正当化もできてしまいます。

実態としてSESによる準委任契約がお互いの都合の良い方向に解釈され、エンジニアが酷使されてしまう状況に問題があると言えます。

また都合よく介入してくる営業会社なども業界をいびつにしている原因の1つでしょう。

SESが悪いからなくせという単純な話ではなく、もっと根本的な部分に目を向けていく必要があります。

まとめ

SESがなくならない理由として現場で見えるものを書いてみましたがいかがだったでしょうか?

次回はSESの本当の問題点は何なのか?を話してみたいと思います。

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